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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)367号 判決 1973年10月12日

主文

理由

上告代理人林武雄の上告理由第一点について。

原判決は、被上告人は上告人からその所有にかかる本件土地を期間昭和四四年一〇月一日から一か年の約で賃借していたものであるが、昭和四五年三月三一日上告人に対し同年四月末日限り本件土地を明渡す旨通知し、同年四月末日本件土地を上告人に明渡したとの事実を確定し、本件土地賃貸借契約は同年四月末日限り終了したものであると判断したうえ、かねて上告人に差入れていた契約保証金の返還を求める被上告人の本訴請求を正当として認容した。

しかしながら、賃貸借における期間の定めは、当事者において解約権留保の特約をした場合には、その留保をした当事者の利益のためになされたものということができるが、そうでない場合には、賃貸人、賃借人双方の利益のためになされたものというべきであつて、期間の定めのある賃貸借については、解約権を留保していない当事者が期間内に一方的にした解約申入は無効であつて、賃貸借はそれによつて終了することはない。

したがつて、被上告人に解約権の留保がなされていたとの事実を確定することなく、被上告人が期間の定めのある本件土地賃貸借契約について期間内に解約申入をしたことによつて、その賃貸借契約は終了したものであるとした原審の判断は、違法であり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。してみれば、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れないものというべく、更に審理を尽す必要があるので、本件を原審に差し戻すのが相当である。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊)

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